“Pyro”Come Around Sundown/Kings Of Leon (2010) Album音楽を聴くという快感エモな泣きのメロディを備えたアンセムとか、キャッチーなグルーヴ感とか耳をつんざく絶叫だとか、そういった今流行の濃いめのサウンドからは100万光年離れたところで鳴る、夕焼けの世界に響くような普遍のロックンロール。だが、肩肘張らないシンプルなバンドサウンドでかき鳴らされる8ビート、リヴァーヴの効いたギターとささくれたしゃがれ声が、ここまで我々の胸を打つのは何故だろう。今やグラミーにもノミネートされるほど、(日本以外で)圧倒的な存在感を放つロックバンド、キングス・オブ・レオンの5thアルバムは、これまでの彼ら史上でも比肩するもののない、真に“何の変哲もない”、普遍のロックンロールに仕上がっている。聴くほどにたまらなく愛おしく、音楽を聴くという楽しさをめいっぱい思い出させてくれるアルバム。こんなに魅力を説明しづらい作品はない。もしかすると、世間に溢れるロックのサウンドは、今や虚飾にまみれたまやかしの姿なのかもしれないね。いつのまにか僕らは、そんなことにさえ気付けないほど、“音楽”から遠ざかってしまったのかもしれないな。あたかも、強力なドラッグが僕らに快感を与えると同時に、人としての尊厳を奪ってしまうように——。鮮やかに網膜を染めるオレンジ色の夕映え。「夕暮れにやってこい」——これから夜が始まるという興奮に日中の疲れが入り交じったような、胸の底にへばりつくようなドキドキが止まらないアルバム。さぁ、お楽しみはこれからだ。めくるめく47分間、どこまで行ったって、どこでイッたっていいんだぜ。ロックンロールはこんなアルバムを待っていた。抑制の効いたメロディとアレンジが本当に素晴らしい。今こそ、この作品はより多くの人々のデッキに延々と乗り続けるべきだ。その権利を持ったアルバムだと思う。個人的には、2010年で唯一ディアハンターを超えたロックアルバム。王者の風格だって?こんな素晴らしいアルバムの前で、駄洒落はよしてくれよ。(2011年2月)