“SCI-FI WASABI”(live) ステレオタイプ A STEREO☆TYPE A/CIBO MATTO
(1999)
Album
フツーにやれちゃってますけど何か? ミニアルバムをはさんで3年ぶりとなる2nd。ニューヨークを拠点にインディーシーンで活躍する日本人女性二人組(しかもグランド・ロイヤル絡み)、だなんて、今ではそう珍しくもないのかもしれないけど、初めてチボ・マットを知った当時はその肩書きのキャッチーさからしてちょっと反則だよなーとか思ったものだ。羽鳥美保の声がいい。プロフェッショナリズムからうまく距離をとった、みずみずしいラッピンが魅力。透明感と強さに加えうっすらソウルのフィーリングまで兼ね備えた、個人的には90年代ベスト女性ヴォーカリストのひとりです。あとはM1「Working For Vacation」のイントロ一発でも分かるように、全編に編み込まれたファットなベース音が耳に心地よい。盤の音質の良さはすなわちアーティストの耳が良い証拠。器官としての「耳」の良さっつうか、時代への感度の高さとも言える。CDショップじゃ便宜的にロックのコーナーに置かれてることが多いですが、“ロックにしてはファズが効いてないし、ヒップホップというには歌が多い、でも単にポップというにはちょっと踊れすぎるよなぁ・・・”とまぁ、当時隆盛を極めたこのベック周辺のサウンドは例によってカテゴライズ不能。ブラジル音楽、ヒップホップを始めとする多くの黒人音楽を軸に据えながらも、このあたりのしなやかなバランス感覚はさすが人種/文化のメトロポリス、ニューヨークでキャリアを積んできたグループならでは。ボサノヴァ、ファンク、ソウル、レゲエ、ロック、ヘヴィーメタル、トリッキーなエフェクトものまで、わざとらしさがないというか気を使わずにただ身近な音・好きな音を咀嚼して出すとこうなった、という。かつそのどれもが“ちょっとかじってみました”感じゃなく、ちゃんと遊びつくせてるのが小憎らしいよなー。久々に聴いたらM4「Lint of Love」、M6「SCI-FI WASABI」(曲名!)あたりのヒップホップが改めて刺さったり。彼女たちの場合、「努力しての多芸多彩」とか「天才アーティスト」っていうよりは、「もともと好奇心の根っこが人より多い普通の女の子」ってキャラがしっくりくるんじゃないだろうか。タイトルの「ステレオタイプA」には「超普通」とか「凡人A」とかそんなような意味があると思うんだけど、「普通にやれちゃいましたけど何か?」みたいなステイトメントにも読めて痛快。偶然かはたまたワザとか(ワザとだろなぁ)、この辺のイタズラっ子感覚もナイス。『興味さえ持てば、誰だって“ホンモノ”になれる』-------そんな、誰もが気付きながらなかなか届かない可能性の向こう側を軽々とゆく彼女たちこそ、憧れられるべき新世代の“フツー”だったのかもしれない。(2009年8月)




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