Pink Moon Pink Moon/Nick Drake
(1971)
Album
再評価につけて思う Nick Drake。 初めて聴いたその瞬間から取り憑いて離れない。僕の魂の塊(たましいのかたまり)の一部だと思っている。身もふたもない言い方だけど、人間だれしもこんな音楽を最期にやれれば、それで死んだっていいんじゃないかとさえ思う。もしあなたが一度でも孤独や空虚感だとかに苛まれ「自分は一人で生まれて一人で死んでいくんだ」と、どこか悟ったような諦めのもとで絶望のふちを覗き込むような機会があったならば、そのとき傍らに寄り添うにはぴったりなアルバムだろう。そうでない人なんているんだろうか?まぁ逆に言えば、でなけりゃ興味はないと思う。エモーションに振れすぎないクールな居ずまいがいいんだよなぁ。26歳で自ら命を絶った伝説のフォークシンガー、ニック・ドレイクのラストアルバム。前2作と比べてブリティッシュ・トラディショナル・フォークを根っことするジャズ的な展開も板についた感じで奏でるが、あくまで全体の基調となっているのは変わらず彼の朴訥な歌声とアコギのシンプルなサウンド。ひたすらにパーソナルな雰囲気を持つ楽曲郡。この幽玄な佇まい、軽い憂鬱の混ざった不思議な酩酊感。その後30年、誰一人としてこの雰囲気をレコードに封じ込めたアーティストはいない。サイケデリックなジャケがいかにもこの時代で◎。晩年彼の心象風景はこんなだったのかも。実は個人的にニック・ドレイクの一番好きなアルバムは1stだし、一番好きな曲は2ndの「Northern Sky」。つまり僕にとってのニック・ドレイクの中でこの3rdはあまり目立たないアルバム…のはずなのだが、なぜか一番回数聴いちゃってるのはこのアルバムなんだよな。際立った一曲がない分トータルの完成度では一番なのかも。生前は全く彼自身が求めるような評価は得られず、その失望も要因となって精神を病み亡くなったニック。没後30年を経てどうやら静かに今、再評価の波が訪れているんだとか。ああ、生きてるうちに評価されないと意味ないと思うね。どうもうちのレコード棚には、若くして死んでしまった人達ばかり集まる傾向があるらしく…。「成功」なんてのはその本人の暮らしに影響を与える為のものでなきゃ何の価値も無いような気がする。でも、再評価の波がくることでより大勢の若者にこの音が届けば、多少「絶望の“望”を信じる」気分になる人間も増えるのか。いや、音楽は人助けじゃない…。そう考えていくと毎度のことながらなんだか複雑な気分になる。人生の指針になる一枚。いやNick Drakeならこのアルバムじゃなくても全部。*ちなみに前述の「Northern Sky」(2nd“Bryter Later”収録 )は間違いなく人間が生み出した最高の一曲!のひとつと言っても過言ではない……と思うよ。(2005年10月)  *2009年一部加筆




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