メロンコリーそして終りのない悲しみ メロンコリーそして終りのない悲しみ/The Smashing Pumpkins
(1995)
Album
異端であり続けることの悲しみを鳴らしたバンドの到達点 原題は"Mellon collie and the infinite sadness"。我が家のCDラックの中で一番好きなロック・アルバム。世界観、サウンドの質感、メロディその全てがバンドの歴史の中でも最高潮の輝きを放ち、大ボリュームの2枚組は恐らく最小限に絞っての28曲、捨て曲全くなし。いつも再生する度に大きな絵本の中に紛れ込んだような不思議な感覚を覚える。童話やおとぎ話の持つ、安らかで心地よいながらも常にどこか漂う不安感、恐怖。完璧主義者ビリーの指揮のもと、ジャケットも完璧。…本作を遡ること更に3年、ロック史上に残る圧倒的傑作2nd「Siamese Dream」をリリースした彼らが次作で更にそれを上回るほどのハイレベルな傑作をものにすると、当時は一体誰が予想しただろう。後の「OK Computer」~「KID A」に至るレディオヘッドの歩んだ道がダブる。時は96年。グランジ/オルタナティヴのアイコンの例の衝撃的な死から2年。そのシーンの中枢を(望む望まないに関わらず)担った彼らもまた、シーンの衰退、終焉をその肩に重く背負うこととなる。しかし名実ともにビッグ・バンドとなっていた彼らはその期待をものともせず、こんなとんでもないアルバムを作り上げた。静かなアコースティック・ピアノのインストで始まるDISC1、1、2曲目をまずは聴いて欲しい。彼らは元来、グランジという枠にカテゴライズされるようなサウンドは一度も鳴らしたことは無かった。弦も切れたギター片手にがなる彼らの騒音に比べ、ビリーの書くメロディはあまりにもキャッチーで繊細過ぎたし、いずれにせよヘヴィーメタル、グラム・ロックを愛し、出地とする彼らは、いわゆる"爪の垢のような"と呼ばれた多くのバンドのなかで明らかに異端児であった。さらに分かりやすく乱暴に言えば、メロディメーカーとしての能力、そしてメンバーの演奏能力についても、シーンの一員としてアンプを破壊しドラムセットを破壊し乱痴気騒ぎを起こし続けるには単に「上手すぎた」のだ。ははは。いやいや。サウンドのダイナミズム、特に疾走感溢れるDISC1-2、1-3、2-6、2-7などでの、ジミー(・チェンバレン)によるドラムスの異常な手数の多さだけでも凄まじい迫力。静/動に美しく震動しながらうねる楽曲の彼方で響く、雄鶏の断末魔のようなビリーの絶叫には息をのむ。“もしかして俺、「普通」なんじゃないか/みんなとまるで同じように”なんて意味深なフレーズで始まるディスク1、M12「Muzzle」は「誰とも違う自分でありたい」と「誰もが考えるのと同じように」考えていた高校時代の僕のテーマソングだったっけ。聴けば聴くほどに、音作りやアートワーク含め当時のグランジシーンでは異物感アリアリ。真のオルタナティヴを生きたバンド、スマッシング・パンプキンズ。この後彼らは失速し、凡庸な楽曲製作に終始してそのバンド生命を終えた(と一般的にはそういうことになっている。)。だが、これほどの高みに達し、追うものを失ったが故の「王者の陥落」。何ら恥じることはない。*2007年春・再結成!(7月には6thアルバム!)オリジナルメンバーこそビリーとジミーだけなものの、ファンとしてはどうにも期待してしまう。(2007年5月)  *2009年一部加筆




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