正夢/スピッツ
(2004)
Single
本当の名曲は奇形化する
スピッツ。個人的にはこれまでの20数年の人生の中で、最も僕という人間形成の過程において大きな影響を与えたバンドのひとつ。正直この曲を初めて聴いたときは、久々の「あの感じ」にドキッとして動けなかった。いや、ひさびさ(…ホント久々!)に彼らの歴史に刻まれるべき名曲の誕生と言っちゃっていいでしょう。音楽雑誌や何かも色々見ていると “「ロビンソン」、「チェリー」にも匹敵する…”とか、各所でとにかく大絶賛、まぁ俺に言わせれば草野マサムネは常に名曲しか作ってないんだけど、そしてその理由まで10時間くらいかけてちゃんと説明できるんだけどなとか、でもこれは久しぶりにちょっと更に核心に迫る感じ。そうそう、「名前を付けてやる」から「ハチミツ」あたりまでのあの黄金期の雰囲気があり…いつにも増して涙腺直撃!なメロディといつものあの声があり…。数多のフォロワーやスピッツ・チルドレンが目指して、目指して目指して目指して目指して……も到達できない地点にいまだ彼らは居る、とちょっとグッとくる一曲でもあったりするのでした。サビの歌詞リフレインにあの子を久々に思い出しちゃったりしたよ。引用しないけど。「三日月ロック」以来組んでるプロデューサー、亀田誠治の攻撃的な刺々しいサウンドプロダクションは正直あんまりスピッツに合ってると思わないし好きでもないのでそこだけがちょっとなんですが、だけどそんなことたいした問題じゃないような気がするくらいの名曲。すいません。愛しすぎてレビューできません(失笑)。それにしても、なんでスピッツはこうもシンコペートするリズムを多用するんだろう…。ギター弾き語りで歌ってみるとわかると思いますが、ストロークしながらだとえれぇリズムのとりにくい曲が多いこと!(コレはそうでもない方かな?)スピッツの面白いところは、リズム面だけ切り取ってみると非常にはねたヒップホップ的(!?)アプローチをとってる曲が実に多いということ。それでいてドラムスにはファンクネスが徹底的に欠けている。徹底的に「白い」!(笑)もちろんこれはいい意味で、そここそが絶妙なバランスであり、俺にとってのスピッツサウンドの魅力のひとつだったりもするんですけど。過剰にリズムオリエンテッドにならず、かといって、素晴らしいメロディを持ってるくせに決してそこだけにフォーカスしにくいという不思議なバランス感が生まれているのだと感じるのです。これが世に言うバンドマジックってやつなのか。ウマい・ヘタじゃないね。ちょっと飛躍します。「本当の名曲は奇形化する」。ん?いや個人的にはもうずっとそんな気がしてならないんです。ビートルズ然り。あの5拍子が出たりユニゾンになったりとかって、作ってるアーティスト本人のなかに確固たるイメージがあって、それを優先して曲を作っていくとどうしてもああいう形になってしまうだけなんじゃないかという気がする。こうして色々な人が技巧的な面から分析しても、アーティストの頭の中にはすでにあの形であったから、それを出しただけ、それがもしかすると一番しっくりくるんじゃないだろうか。脱線した。スピッツの場合も、草野マサムネが意識しようとしまいと、イメージを楽曲にする段階でどこか真っ当なポップじゃない(失礼)、教科書には載ってない手法じゃないと構築不可能な部分が勝手に生じてくると。必ずどこかに。言葉の端々がリズムに乗り切れなかったり、コードがギター一本じゃ雰囲気でなかったり。それのことを僕らは個性とか才能と呼んでるんだと思うんです。なんかわかんないかなぁって…。ま、とにかく国内外今年聴いた中では屈指の逸品、それがスピッツで嬉しい。みんなも聴いたでしょ?どお?(2004年11月)
*2009年一部加筆

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