ケルン・コンサート The Koln Concert/Keith Jarrett
(1975)
Album
美しく、ジャズではない もうずっと前、学生時代に家庭教師のバイトをしていた頃生徒のお母さんから何気に勧められたアルバム。その当時はまだ僕にとって「興味はあるがどこから手をつけていいものかわからん」ジャンルの代表だったジャズ。そんなこともありその後しばらく、頭の隅にはあったものの聴くことはなかった。完全即興ピアノ・ソロリサイタル、1975年キース・ジャレットの伝説のコンサートを収録したアルバム。ジャズについてさほど明るくないためでかいことは言えませんが、これは真っ当なジャズかといえば全然そうじゃないと思います。クラシック的な雰囲気もふんだんにあり…美しい静寂。聴衆のたてる微かなざわめきの音。溢れるメロディを抑えきれない様に唸りながら弾くキース。繊細かつ自由に奏者のイマジネーションによって導かれる、二度と再現できない即興プレイ。ときに激しく揺れる旋律はしかし不思議と耳になじみ、まるで深海/星空?に沈む/浮かぶ?ような気分にさせてくれます。でも、僕がジャズを敬遠しがちな理由の一つであり、同時にそのほぼ全てでもある「JAZZ」という言葉の持つ「難しい」とか、「高尚な」、「年寄り臭い」、人によっては「つまらない」とか・・・という形容詞の類は、ある意味このアルバムには無縁のものだと聴いたとき素直に感じた。そしてもっと早く出会っていなかったことをちょっとだけ後悔した。すんなりと耳から全身に行きわたるようにしみ込む音楽。個人的に、ロック・ポップと呼ばれるジャンルのものでは風景や未来・過去を連想させたり、感じさせるものに好きな作品が多い気がする。つまりはノスタルジーを求めてるんだけど、音のハード/ソフトに関係なく聴き手個々人の過去の経験や思いを突っついてくる種の音楽が好きだ。だが少なくともこのジャズというジャンルの音楽を聴くときは少し感覚を変える必要があるようだ、と気付かされたアルバムでもある。聴いて「いいなぁ」と思ったものでも、音楽そのもの以外のイメージが浮かばないものが多いのだ。音楽が音楽の為に演奏されている…?それが良くも悪くもジャズが言われる「プレヤビリティ優先指向」?エモーションの欠落ってことなんだろうか?(うーん、良い表現が浮かばない…)ただし、僕はそれが即悪いこととは感じなかった。「なるほど…」ただそういう種類の音楽もあるんだ、と思った。その後、僕自身に限っていえば、自分が聴いたことのないジャンルの音楽を聴いて感じる違和感と、聴き続けていくうちに自分からその音楽に合わせていくという新たな感覚を見つけていく、なんかそのレベルアップしていく感じが面白いからどんなジャンルの音楽にでも手を出すようになったきっかけでもあるのかもしれない。あ、それはわりと前からかな。…うーむ。なーんて、音楽は音楽としてなり続けるものでありながらも、スピーカーの前で自分はその音楽に何を求めているのだろうとか、そういう難しいことを考えるようになった初めてのアルバムだった、ということは少なくとも言えるかもしれない。おすすめの聴き方はデッキに入れてPlayボタンを押したらあとは一時間、ただスピーカーの前に立つ。それだけ。そしてそんな普段は考えもしない色々なことに思いをはせてみるといいと思います。テンション途切れずぐいぐい聴衆を引き込んでいく、ライヴホールの空気を真空パッケージしたかのような26分15秒にわたる長尺の1曲目が破格に素晴らしい。僕のCD棚のうち最もビューティフルなアルバムの一つ。(2005年5月)  *2009年一部加筆




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