“House Of Cards” In Rainbows In Rainbows/Radiohead
(2007)
Album
ファーストインプレッション・オブ・ザ・レインボウ(+α) (※ほぼ数回聴いただけの時点でこのレビューは書かれています)近年の諸作ではややその存在が薄くなりかけていたメロディ、バンドサウンドが復活し(無論エレクトロニクス中心ではあるが)ロックバンドのアルバム、という位置づけも「まぁ…可能」なぐらいまではポップに仕上がった、充実の7thアルバム。前作"Hail to the Thief"から既に4年。そうかもうそんなになるんかー。まだ彼は大統領だ。ブログでレコーディング状況がアップされたり、サウンドが一部聴けるようになっていたりする中、ファンの間でも人気が高かった「videotape」「arpeggi」やかつて「Big Idea」という曲名でライヴでも披露されていた「Nude」など、アルバムを代表するようなフックのある曲がやや増えたのも古くからのファンには嬉しいところ。しかし、まだ、難解(笑)。これは今現在の彼らの知名度を参照すると、の話。マスレベルで繰り広げる音楽にしては、これでもまだ、まだ間口が狭すぎる、そんな気がする。今一度考えてみたい。「何故、このバンドがここまで世界的に人気なのか」。暴論かもしれないが、それは現在進行形の彼らのサウンドによってでは、ない。正確には「そうあるべきでは、ない」。未だ、"あの音"、"あの声"、"あのメロディ"…をひたすら渇望し続ける大勢のファンによって強固に支えられているからである。1st「Pablo Honey」、2nd「The Bends」そして決定的3rd「OK Computer」…あの頃のサウンドを望む声は、どんな掲示板でもブログでもいい、数ページめくってみるだけで明らかである。彼らは今回こそ、今回こそ…とその注目を彼らからブレさすことなく追いかけ続ける。(それこそがかつて彼らのメロディがいかに普遍的魅力を備えていたか、の証明に他ならない)…あえて書いたが、これは個人的なノスタルジーでは決して、ない。だって俺は今の方が好きだもん。思うに現在Radioheadの音楽から感じるある種の"煮え切らなさ"、それは一部の人間(僕を含め)にとっては現時点での彼らの最大のチャームポイントであることも間違いないのだが、今の彼らにはそんなフェティシズムの一種を満たす嗜好品として味わわれるべき密室度・クオリティの高さこそあれ、ここまで巨大なマーケットに提供されるためのポピュラリティは持ちえていない/あるいは周到にコントロールされ、排除されているはずなのである。ただしここで勘違いしてはいけないのは、それがあくまでバンド自身の意思で行われており(つまり彼らの才能の「ある一部」は彼ら自身により敢えて封印されている)、まんまとその手のひらで遊ばされる僕たちがそれをマゾヒズム的に楽しむやり方こそが彼らの音楽を真に楽しめるという…ほらやっぱ、マニア向けじゃない??(笑)ナイスなアルバムには間違いないのだが。*なお本作は、この規模では史上初ともいえる試みであるダウンロード限定(先行)販売となる。単純に、現在世界POP/ROCK市場最も重要なバンドの一つである彼らはまた同時に2007年10月現在レコード契約を持たない、つまり作品をディストリビュートするメジャーレーベルに所属していない、"世界最大の無所属バンド"でもあった。必然的にその一挙手一投足には世界中が注目し、完成の噂が漂い始めたニューアルバム「In Rainbows」については大手レーベル間ですさまじい争奪戦が繰り広げられることは必至と予想されていた。果たして、彼らのとった手段はこれである。グレート・ロックンロール・スウィンドル。痛快。ダウンロードは公式HP(リンク)より(2009年現在は終了。CD版が販売されている)。価格は「It's Up To You」、"貴方次第"!つまりこちらの言い値で購入できるし、極端な話「頂戴」できてしまうのである。これは他ならぬ彼らアーティスト自身にとってこれまで最もナイーヴな問題であったであろう知的財産、「作品」という概念(そしてそこには巨額の金がまとわりつく…)に自らメスを入れ、あるいは単に破壊したという驚くべき次の一手である。無論、無料ダウンロードという手段自体はインディーズや自主制作音楽家にとって何ら珍しいことではない。しかしそれをレディオヘッドのような、かつてメジャーレーベルに所属していた巨大アーティストがやったことには何らかの意味があるはずだ。(2007年10月)

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・・・と、数回聴いただけの段階ではこう書いた。この時点でのこの印象は間違いないと思う。ただ結局、これはとんでもない傑作だった。トム自身「これまで書かれた曲のなかで最もセクシーな曲」と語るカーリー・サイモン「Nobody Does It Better」さえ超えたのではないかという、叶わぬ不倫の恋についての歌「House Of Cards」がめちゃくちゃにいい。ただしこの一曲だけが突出しているわけではなく、他の9曲もこれまで書かれたレディオヘッド・ソングスのなかで間違いなくトップ20には入るクオリティ。そのことにより、アルバム全体の統一感がとてもいい。全体として聴かせる作品のため一聴しただけでは伝わりにくいが、徹底して抑さえの利いたメロディ、選び抜かれた音色と音質、抽象的なリリック、演奏・・・10曲それぞれが持つ、ほかのどれとも代え難い魅力的な雰囲気。全てのパーツが完璧なバランスで組み上げられた10面体のような。虹の中からは虹を見ることができないように、この作品が持つ色の多彩さもすぐには見えてこない。だが言いようのない不思議な魅力にとりつかれて何度も聴き返すうち、気付けばたゆたう七色の光にふんわりと包まれている。あたたかい秋の日の木漏れ日の下、一曲ごと大切なものを指折り思い出していく、そんなアルバムである。“内省的、陰鬱、ペシミスティック”云々、数年前までの彼らに必ず付いて回ったそれらの言葉も本作には必要ない。各音楽誌がこぞって2007年ベストアルバムに選出したのも納得の大・大・大名盤。あ、今はもうCDでも出ています。(2009年9月追記)




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